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春の宵
話はじめをどうしたらよいのかわからない
たぶん世の中の形ばかりが大事とおもう多くの人には受け入れられないかもしれないけれど こんな話もあることを書き記しておきたい。 素敵な祭壇に出会った。 どうしてもそのことが書きたかったし 自分も出来たらそんな風に送ってもらいたいとおもったから 美術部のモチーフにミモザの花があるかな~と 糸の花に寄ったときの話 ギャラリーでいろいろ話をして 次回の企画の話で 母屋にある資料を見に場所を移した。 薄暗い部屋の中で 片隅だけが明るくスポットライトで照らされている。 古い勉強机の上に虹色の布が見えた 脇にお庭のクリスマスローズがアンティークのグラスに入っている 「母が三月三日に突然亡くなって・・」と松永さん 「いつもそこで7時までは書き物をしたりしていたからそれまで明るくしているの」 「えっ?」と言ったきり状況があまり呑み込めない私 実はお母様ともお会いしたこともないし お母様のお話を詳しくお聞きしたこともない 「朝までは普通にしていたのだけど、夕方急に倒れて・・」 改めて机の上を見ると虹色のストールに包まれた箱はお母様 彼女が小学校の時から使っていた引出しのついた貫録のある文机 レースの上に小皿にはお線香立ての灰、 七宝焼きの角皿の上にウエハースが一枚 周りにはクリスマスローズや家の周りの’春’ そして箱の前にはお母様の若かりし頃 結婚前のかわいい女性がにっこり笑っている茶色の写真 「本人だって今の姿より人生で一番輝いていた時の方が喜ぶかと思って・・」 はじめましてお母さん! ステキな祭壇を作ってもらってよかったですね~! ご愁傷様ということばとか香典の心配なんかまったく頭に浮かばなかった ただ、ハグしたい気分でお母さんと向き合ってお話をした。 まるで前から知っていたかのように 「昔、柳宗悦が自分が死んだら、どの季節でも周りの木の一枝を祭壇に供えるだけでよいという言葉を残して、それにそって芹沢銈介が作ったのよね。その話が頭に残っていて、私だったらこうしてほしいな、と思ったの」 お母さん、よかったですね ステキな娘を持ちました。 そう育ててきたのでしょうね。 そんなにうまくはいかないだろうけど こんな送り方もあるのだと・・・ わが家族では絶対にできないこと だからこそうらやましい やわらかなこころ 心に残る 春の宵
by ne_co201
| 2012-03-29 13:29
| すてきなひと
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